「元気そうだから大丈夫」と思う前に、少しだけ気にかけてほしいこと
身近な高齢者の暮らしについて、改めて考える出来事がありました。
その中で、
「もっと早く気づけることがあったのではないか」
と、私自身が考えるようになりました。
高齢になっても、一人で元気に暮らしている方はたくさんいます。
仕事を続けている方もいます。
自分で買い物に行き、食事を作り、自分のことは自分でする。
そんな姿を見ていると、周囲もつい、
「元気そうだから大丈夫」
「一人で生活できているから大丈夫」
と思ってしまいます。
でも、
一人で暮らしていることと、何も困っていないことは、同じではありません。
今日は、身近に一人暮らしの高齢者がいる方に、少しだけ知っておいてほしいことを書きたいと思います。
年齢とともに増えていく「小さな不便」
年齢を重ねると、それまで当たり前にできていたことが、少しずつ負担になることがあります。
買い物へ行くこと。
重い荷物を持つこと。
掃除やゴミ出し。
病院へ行くこと。
電球を交換すること。
高いところにある物を取ること。
一つひとつは、とても小さなことです。
だから本人も、
「これくらい自分でできる」
と思うかもしれません。
周囲も、その不便になかなか気づきません。
けれど、その小さな不便が少しずつ積み重なっていくことがあります。
そして今、高齢者の暮らしには、昔にはなかった「新しい不便」も増えています。
急速なデジタル化も「日常生活の不便」の一つ
現在80歳を超えている方々は、戦後から高度経済成長期、そして現在まで、日本社会が大きく変化する時代を生きてきました。
そして近年、私たちの暮らしはさらに急速に変わりました。
スマートフォン。
インターネット。
キャッシュレス決済。
セルフレジ。
アプリ。
二段階認証。
オンライン手続き。
そしてAI。
若い世代にとっては「便利になった」と感じることでも、すべての人にとって便利になったとは限りません。
例えば、契約しているサービスを一つ解約すること。
電話をかけても、なかなかオペレーターにつながらない。
ようやくつながったと思ったら、音声ガイダンス。
番号を選択する。
今度は音声認識。
その先で、
「Webサイトからお手続きください」
と言われる。
Webサイトを開いたら、IDとパスワードを求められる。
パスワードが分からない。
再設定をすると、認証コードがスマートフォンに届く。
ここまで来ると、
「もう、いいや……」
と諦めてしまう方がいても、不思議ではありません。
「解約できない」が、お金の問題につながることも
もし解約を諦めてしまったら、そのサービスを使っていなくても料金は引き落とされ続けます。
月に数百円。
月に数千円。
一つひとつは小さな金額でも、複数あれば負担は増えます。
それが1年、2年と続けば、決して小さな金額ではありません。
これは、
「高齢者はデジタルが苦手だから」
という一言だけで片付けられる問題ではないと思います。
買い物へ行くのが大変になる。
ゴミを出すのが大変になる。
病院へ行くのが大変になる。
それと同じように、
「契約や手続きを、一人で最後まで完了することが難しくなる」
ことも、今の時代における日常生活の不便の一つではないでしょうか。
高齢者にも「選べる社会」であってほしい
スマートフォンには、便利な機能がたくさんあります。
でも、すべての人が、そのすべてを必要としているわけではありません。
電話をかける。
電話を受ける。
家族と連絡を取る。
それだけで十分という方もいます。
私は、高齢者の選択肢の一つとして、いわゆる「ガラケー」のような、電話を中心にシンプルに操作できる端末やサービスも残ってほしいと思っています。
新しい技術を使えるようになることだけが、社会の進歩ではありません。
新しいものを使いたい人は使える。
シンプルなものを使いたい人には、その選択肢がある。
年齢に関係なく、自分に合った方法を選べること。
それも、誰もが暮らしやすい社会の一つの形だと思います。
身近な高齢者にありませんか?「10のチェックポイント」
ここで一度、身近にいる高齢者の方を思い浮かべてみてください。
最近、こんな変化はありませんか?
□ 1.一人暮らしをしている
普段の生活の変化に、周囲が気づきにくい環境ではありませんか?
□ 2.高齢になっても仕事を続けている
元気だから働いているのか、生活のために働き続けているのか。外から見ただけでは分かりません。
□ 3.以前は家に入れてくれたのに、最近は入れてくれなくなった
室内を見られたくない理由が何かないでしょうか。
□ 4.誘っても、あまり外へ出てこなくなった
以前より人と会う機会が減っていませんか?
□ 5.電話・メール・LINEへの返信が遅くなった
連絡の頻度や会話の様子に、以前との違いはありませんか?
□ 6.身だしなみに変化が出てきた
服装、髪、清潔さなどに、以前とは違う様子はありませんか?
□ 7.身体や会話に変化がある
痩せた、歩く速度が遅くなった、同じ話が増えたなど、小さな変化はありませんか?
□ 8.家の周囲の様子が変わった
郵便物がたまっている、ゴミが出ていないなど、いつもと違うことはありませんか?
□ 9.お金について気になる言葉が増えた
「お金がない」と話したり、必要なものまで我慢したりしていませんか?
□ 10.何かあったとき、日常的に頼れる人が近くにいない
親族がいることと、実際に頼れる人がいることは同じではありません。
このチェックリストは、いくつ当てはまったら危険という診断ではありません。
一つでも「以前と少し違うな」と感じることがあれば、その人を気にかけるきっかけにしてほしい。
そのための10項目です。
「親族がいるから大丈夫」とは限らない
子どもがいる。
兄弟姉妹がいる。
甥や姪がいる。
それだけを聞けば、
「何かあったら家族がいるから大丈夫」
と思うかもしれません。
でも、戸籍上の親族がいることと、日常生活で頼れる人がいることは別です。
遠く離れて暮らしているかもしれません。
長い間、疎遠になっているかもしれません。
親族にも、それぞれ仕事や家庭があります。
だから、
「家族がいるだろうから大丈夫」
と、周囲が思い込まないことも大切だと思います。
75歳、80歳を超えて働いている方にも、少しだけ目を向けてほしい
高齢になっても働く理由は、人それぞれです。
仕事が好き。
人と関わっていたい。
健康のため。
生きがいになっている。
もちろん、そんな方もたくさんいるでしょう。
一方で、
生活のために、働き続けなければならない方もいます。
外から見ただけでは、その理由は分かりません。
「仕事をしているんだから元気」
と決めつけるのではなく、
無理をしていないかな。
何か困っていることはないかな。
ほんの少しだけ、気にかけてみてほしいと思います。
大げさなことをする必要はありません
何か特別なことをする必要はないと思います。
「最近どう?」
「何か困っていることない?」
「買い物、大丈夫?」
「スマホで分からないことない?」
「解約したいもの、そのままになってない?」
「よく分からない引き落とし、ない?」
そんな一言でいい。
そして、
「何かあったら連絡してね」
と伝えておく。
それだけでも、「自分のことを気にかけてくれている人がいる」という安心につながることがあります。
これは、いつかの私たちの話でもあります
私たちも、いつか年齢を重ねます。
今は当たり前に使えているスマートフォンも、その頃にはまったく違うものになっているかもしれません。
今は簡単にできる手続きが、いつか難しく感じる日が来るかもしれません。
だからこれは、
「今の高齢者だけの問題」ではありません。
誰もが年齢を重ねても、自分らしく暮らしていける社会をどう作っていくのか。
その最初の一歩は、制度でも、大きな活動でもなく、
身近な誰かを、少しだけ気にかけること。
なのかもしれません。
身近に、一人で暮らしている高齢者はいませんか?
今日、その人の顔を思い浮かべたなら、
「最近どう?」
そんな一言から始めてみませんか。
次回は「困ったとき、どこに相談すればいい?」
高齢者の一人暮らしを支える制度やサービスは、自治体によって異なります。
次回は、利用できる高齢者向けの相談窓口や支援サービスについて、公式情報を確認したうえで、分かりやすくまとめたいと思います。
※この記事について
この記事のチェック項目は、病気や認知症などを診断するためのものではありません。身近な方の暮らしの変化に気づくための、一つのきっかけとして作成しています。
長い人生を頑張って生きてきた人が、人生の最後まで安心して暮らせる社会であってほしい。
そんな思いを込めて、この記事を書きました。

